Smiley face

 戦後80年の夏、私たちの現在地はどうなっているのか。「ほんまもん」の言葉をつむぎ続ける作家の高村薫さんをたずねた。

 ――戦後80年を迎えました。

 「戦後」という言葉は80年も経つと意味を持ちませんし、数字を数えることには意味がない気がします。100年なら抽象的な意味はあるかも知れませんが。

写真・図版
高村薫さん=滝沢美穂子撮影

 ――日本が80年間、戦争をしてこなかった証しとはいえませんか。

 戦後を戦争をしなかった年月と数えるのは、私はおこがましいんじゃないかという気がします。米国の「核の傘」の下、日本が軍事大国になることを米国も求めず、ひたすら経済発展を追求できた。日本が積極的に平和のために外交で身を削った年月ではないですから。受動的にたまたま戦争をする必要がなかっただけのことです。

 過去の15年戦争(1931年の満州事変から45年の敗戦まで)に対して、「侵略戦争ではなかった」という言説がちらちらと頭をもたげ続けてきた80年です。だから戦争をしなかった80年と数えるのは潔くないし、正しくないと思います。

記事の後半で高村薫さんは、参院選で参政党が掲げた「日本人ファースト」と戦時中に使われた、ある言葉の共通点を指摘しています。また、ネット言論への警鐘、日本が再び戦争をするおそれについても語っています。

 ――侵略戦争の総括をしてい…

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